減税期間が過ぎたり、生活に余裕が出てきたりと、住宅ローンの繰上返済を検討する夫婦は多くても、一番お得に返済できる方法が分からず悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
単に繰上返済と言っても、住宅ローンの借り方や金利、保険の内容によって取るべき方針が変わってきます。
この記事では、住宅ローンをペアローンで借り入れしている共働き夫婦が、繰上返済でとるべき方法と考慮するべきポイントをまとめています。建築士でもあるファイナンシャルプランナーが、住宅のプロとして詳しく解説しています。
ペアローンについて詳しく知りたい方は、「ペアローンと収入合算の違いをファイナンシャルプランナーが共働き夫婦向けに解説」もあわせてお読みください。
※2019年5月31日追記(2018年5月4日公開)
- 繰上返済の2つのタイプとは
- ペアローンについてもう一度確認すること
- 共働き夫婦がペアローンで繰上返済する2つの方法
- ペアローンで繰上返済するときに考慮する3つのポイント
- ペアローンの繰上返済で損をしないためには
繰上返済の2つのタイプとは
共働き夫婦がペアローンで住宅ローンを借り入れしている場合に、どういった繰上返済の方法があるのでしょうか。それを知る前に、まずは繰上返済の基本的な性質を理解する必要があります。
繰上返済の方法は、大きく分けて2つのタイプがあります。
一つは、毎月の返済額を軽減することができる返済額軽減型で、もう一つは、返済期間を短くすることができる期間短縮型です。
返済額軽減型は、繰上返済することで毎月の返済額を軽減できるため、家計を安定させることができます。期間短縮型は、毎月の返済額は変わりませんが、返済期間が短くなり、返済額軽減型よりも利息軽減効果は大きいというメリットがあります。
ペアローンについてもう一度確認すること
安定的な収入が2人とも得られる共働き夫婦は、住宅ローンを借り入れする際にいくつかの選択肢があります。主だったものは、ペアローンと収入合算という2つの方法です。
ペアローンは、特に共働き世帯の多い現代において選ばれることの増えてきた方法の一つで、夫婦それぞれが個別の住宅ローンを借りるというものです。
単独で借り入れるよりも借入額を増額できたり、それぞれに住宅ローン控除が適用できるなどのメリットがあります。
詳しくは、「ペアローンと収入合算の違いをファイナンシャルプランナーが共働き夫婦向けに解説」でまとめています。
共働き夫婦がペアローンで繰上返済する2つの方法
住宅ローンをペアローンで借り入れしている共働き夫婦が、繰上返済をしようとした時には、2つの方法があります。
一つは、どちらかの住宅ローンを集中して繰上返済する方法です。繰上返済に使える原資として仮に100万円があった場合、借入額が少ない方に集中して100万円を繰上返済するイメージです。
もう一つは、それぞれの住宅ローンを平行して繰上返済していく方法です。同じく原資として100万円があった場合、それぞれ50万円ずつ繰上返済するイメージです。
収入合算で借り入れしている共働き夫婦の場合は、収入は一つですので、それを繰上返済していくことになります
ペアローンで繰上返済するときに考慮する3つのポイント
共働き夫婦がペアローンで繰上返済するときの2つの方法を説明しましたが、どの方法を取ればいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。考慮するべきポイントを3つまとめています。
家族のライフプランから方針を決める
夫婦や子供を取り巻く環境は常に変わっていくもので、特に現代では中年期の転職も珍しくなく、子供がいるご家庭では、成長にあわせて働く環境や時間を調整したいという要望も多いのではないでしょうか。
そういったときには、ペアローンでどちらか一方を優先的に繰上返済する方法を取ることで、最終的に一人は借り入れの負担が軽くなり、そのパートナーは別のことに取り組める可能性が高くなります。
例えば、時短勤務にして子供と一緒にいる時間を増やしたり、収入は下がるが本来やりたかった職業に転職するなど、環境を変えることに積極的になれるかもしれません。
将来目指したいライフプランと、住宅ローンの繰上返済をリンクさせて考えると良いと思います。
金利の高い方から繰上返済する
ペアローンでは、双方の借り入れ金利を比較し、支払利息が多く減る方法を取るという選択肢もあります。
夫婦で借り入れ金利が異なる場合や、住宅ローンにあわせて諸費用ローンを借りている場合などは、金利が高い借り入れを優先して繰上返済していくのが有効です。
その際に気をつけなければならないのが、繰上返済の事務手数料です。最近では繰上返済の事務手数料を無料としている金融機関は多いですが、もし事務手数料が有料だと、せっかく支払い利息を減らせても、その効果が少なくなってしまいます。
そのため、金利の高い借り入れを優先しつつも、事務手数料についても確認が必要です。
団体信用生命保険の保証期間と支払い利息の減少を比較検討する
ペアローンなどで繰上返済をするときには、金利だけを見て踏み切るのではなく、団体生命保険の保障期間も考慮にいれる必要があります。
一般的には住宅ローンと同時に、団体信用生命保険に入るケースが多いかと思います。借りた人に万が一の事故などがあった場合に、それ以降の住宅ローンの返済額を団体信用生命保険が肩代わりするものです。
団体信用生命保険の保険料は、住宅ローンの金利に含まれているため、新たな金銭的な負担なく生命保険に入っているようなもので、借り入れ期間が35年だった場合、35年間の生命保険に入っていることになります。
ペアローンで借り入れをしている場合は、それぞれが団体信用生命保険に入っていることになるので、どちらか一方を集中的に繰上返済していくパターンと、並行して繰上返済していくパターンいずれも保障期間のことを頭にいれて検討しましょう。
ペアローンの繰上返済で損をしないためには
ペアローンで住宅ローンを繰上返済していくのは、収入合算の場合よりも選択肢がある分、考えるべきポイントも複雑で、家庭の状況によっても大きく変わってくるかと思います。
パートナーが転職や進学、子育てによる勤務形態の変更などを検討している場合は、そのパートナーのローンを集中的に繰上返済していく方法がおすすめです。
一方で、生命保険の保障期間や毎月の返済額を気にしている場合は、繰上返済方法を期間短縮型ではなく返済額軽減型を選択するのがおすすめです。
ご家族で話し合った上で方針を決めていくのはもちろんですが、長期的な視点で考えたときに損をしないためには、取れる選択肢の中でシミュレーションした上で、その時の状況に応じて都度見直しをすることが重要です。
長沼アーキテクツでは、共働き夫婦の将来の返済計画を見込んだ住宅購入をご相談いただけます。ぜひお気軽にご相談ください。