30代から考えるお金と住宅の学校|Houstory

ファイナンシャルプランナーで一級建築士であるお金と住宅の専門家が、30代に向けてお金や住宅に関する専門用語やノウハウ、お役立ち情報をお知らせするブログです。

土地探しで注意すべき所有権と借地権の違いと見落としがちなポイント② シミュレーション編

前回の記事では、所有権と借地権の違いを説明しました。今回は実際に相談されたケースで、2つの権利の違いを見ていきます。

実際のケースでのシミュレーション

とある郊外の鉄道駅から徒歩圏で、150㎡程度の土地を購入し、家を建てたいという相談を受け、一緒に土地探しを始めました。ほどなく2つの土地を見つけ検討に入りました。

1つは徒歩5分の約140㎡の所有権の土地でした。土地はほぼ真四角な形で、北側で道路に接していました。周りには戸建て住宅が多く、静かな環境でした。

もう1つは徒歩7分の約170㎡の借地権の土地でした。こちらもほぼ真四角な形でしたが、2方向で道路に接する角地でした。その分、2つの方向に対して開放的で明るい家が建ちそうでした。

価格は、所有権の土地が2,450万円、借地権の土地が1,000万円でした。この価格を最初に見たときには、土地が広く角地であるのに価格は約1/3の借地権の土地が、とても割安に見えました。

そこで上記に挙げた違い①~④について、1つずつ確認していくことにしました。

違い①【税金】

所有権の土地には、固定資産税が年7万円かかるということでした。借地権には税金負担はありませんので0円です。

違い②【地代・更新料】

一方借地権の土地には、月1.6万円の地代を支払う必要がありました。また借地権の契約の残りが約10年であり、10年後には更新料がかかります。更新料の金額は現時点では分かりませんでしたが、仮に借地権価格の5%である50万円と想定しました。

トータルコストシミュレーション

違いの①と②を踏まえて、50年後までのトータルコストを計算してみました。

仮に建物の建築費を3,000万円として、土地費と建築費の合計をフラット35で借りた場合の毎月支払い額に、税金や地代、更新料を加えた額を算出しました。

すると所有権の土地よりも、借地権の土地のほうが、50年後までのトータルコストは約980万円も安くなることが分かりました。

やはり借地権のほうが安いのかと思いますが、土地を売却する場合までを考慮し再計算してみます。

50年後の売却価格は分かりませんが、購入した価格で売れると仮定すると、逆に所有権の土地の方が、トータルで約460万円も安くなりました。

ここまでは、地代や更新料が50年後まで変わらない前提です。地代が仮に20年の更新のごとに1.5倍に値上げされたと仮定すると、所有権の方がさらに安くなり、売却まで考慮して約1,200万円もコストは少なくなります。

さらに更新料が50万円ではなく100万円であったと仮定すると、さらに差は大きくなり、約1,400万円も所有権の土地が安くなりました。

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所有権と借地権の本当の違いは権利を行使できる範囲

上記のケースでのシミュレーションでは、地代の値上げや更新料、売却価格の設定など、すべて仮定での話です。よって所有権と借地権のトータルコストの差額の大小は問題ではありません。

2つの権利の本当の違いは、「借地権はすべてが購入者の思い通りにはならず、第三者の意向の影響を受ける権利である」ということです。

地代や更新料を地主がどのように設定するかによってトータルコストは大きく異なり、また売却時にはその時点での金融機関の融資の姿勢によって売却の可能性が制限されます。

所有権に比べて制限も多い借地権ですが、都内の良い立地にも借地は意外とあるものです。もし住宅資金として住宅ローンに頼らず現金を多く用意できれば、少ない初期費用で良い立地の土地に家づくりが出来る可能性があります。

長沼アーキテクツでは、お客様のライフスタイルに、所有権と借地権のどちらが合っているか、一緒に検討いたします。ぜひご相談ください。

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