30代から考えるお金と住宅の学校|Houstory

ファイナンシャルプランナーで一級建築士であるお金と住宅の専門家が、30代に向けてお金や住宅に関する専門用語やノウハウ、お役立ち情報をお知らせするブログです。

経営者のための住宅購入や役員社宅などの法人用不動産購入スキームを節税や経費算入の観点から解説

経営者にとって、自宅は住まいであると同時に、新たなビジネスアイデアや戦略などを考える、大切な場所です。そんな経営者が、自宅を購入する際に考えるべき方法と、経費節税について見ていきます。

※ここで言う「経営者」とは、法人(株式会社や合同会社など)を所有経営する人とします。また税金についての詳細なシミュレーションは、税理士とご相談下さい。

個人で住宅ローンを借りて購入する

自宅を購入する場合に多くの人が考えるのが、「住宅ローンを借りる」方法でしょう。経営者も、住宅ローンでの購入が第一の選択肢になります。

経営者個人で住宅ローンを借りて自宅を購入するケースを考えてみます。仮に、土地3,000万円、木造建物3,000万円、合計6,000万円の住宅を購入するとします。

次に取る選択肢は2つあります。1つは「個人の住宅ローン控除を最大限受ける」方法。もう1つは「個人で購入した自宅を法人に社宅として貸す」方法です。

個人の住宅ローン控除を最大限受ける

住宅ローンを借りて自宅を購入した場合、年末のローン残高の1%(ローン残高4,000万円を上限、認定住宅は5,000万円上限)を、所得税や住民税から控除を受けることが出来ます。

上で仮に設定した住宅(合計6,000万円)を、自己資金1,000万円、住宅ローン5,000万円で購入した場合(諸経費は計算から省きます)、1年目の年末のローン残高が4,9**万円だった場合、上限4,000万円ですのでその1%である40万円が、税金から控除されます。

住宅ローン控除は10年間受けることが出来ますので、最大で40万円×10=400万円もの節税が可能となります。住宅ローン控除の節税面でのメリットは大きいです。

自宅を法人に社宅として貸す

個人で購入した自宅を法人に社宅として貸すと、法人は経営者個人に家賃を支払うことになります。

家賃は法人の経費になりますので、法人にとっては節税になります。一方個人は家賃という所得が増えることになり、個人の税金は増えることになります。

法人でいくら節税になっても、個人で税金が増えるこの方法は、あまり節税という面からすると有利ではないかもしれません。

ちなみに自宅を賃貸に出した場合、住宅ローン控除は受けることが出来ません。住宅ローン控除の条件は、本人が居住していることになっているためです。

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法人で住宅を購入し社宅とする

経営者の場合、個人で自宅を購入する以外にも選択肢があります。法人で住宅を購入し社宅とする方法です。

法人で不動産を購入する場合には、経費(ローンの金利や固定資産税、火災保険や修繕費など)を損金にすることが出来ます。さらに建物については減価償却費を経費とすることが出来ます(土地は価値が下がらないものとして減価償却は認められていません)。

法人で経費を算入する

上で仮に設定した住宅(土地3,000万円、木造建物3,000万円)の場合、木造の減価償却期間は22年ですので、建物3,000万円×償却率0.046(22年)=138万円を、経費とすることが出来ます。

138万円は経費の額ですので、これによる1年間の法人の節税額は、法人税の実効税率を30%とすると、138万円×30%=41.4万円となります。

これ以外にも、購入時や維持の経費による節税額が加わります。

法人購入のデメリットは個人の家賃と融資金利

法人で購入した住宅は社宅として、経営者に貸すことになります。経営者は法人に家賃を支払うことになりますので、その分は個人の所得から差し引かれます

また法人で不動産を購入する場合、現金での購入でなければ、金融機関からの融資を受けることになります。

個人の住宅ローンは、例えばフラット35では1%程度の金利を35年固定で借りることが出来ますが、事業融資はもっと高い金利となり、融資期間も短くなります

仮に上の住宅(合計6,000万円)を、個人の住宅ローン金利1%35年で購入すると、総支払額は約7,113万円になります。法人の事業融資金利3%20年で購入すると、約7,986万円になります。

個人と法人では融資金利が大きく違うために、支払う利息が約800万円も違います。その他で算入した経費を打ち消してしまうくらいの負担増です

経営者の自宅は個人の住宅ローン控除を10年間受けることから考える

個人で購入する2つのケースと、法人で購入する1つのケースを、経費算入の範囲と節税の面から見てきました。

ここで分かることは「個人の住宅購入は最も優遇された制度である」ということです。

金利1%で35年固定で借りられる住宅ローンは、あらゆる融資金利のなかで、最も低く借りやすくなっていると思います。

法人の融資だけでなく、個人の自動車や教育ローンを含めても、ここまで金利が低く長期で借りられるものは無いでしょう。

それだけでなく住宅ローン控除は、住宅ローン残高の1%×10年=ローン総額約10%を、税金から控除できる、とてもメリットの大きい制度です。

経営者の場合も個人購入がおすすめ

経営者の場合は、自宅購入について会社員では取れない、複数の選択肢があります。

しかし個人の住宅購入がこれだけ優遇されている現在、まずは個人で低い金利で住宅ローンを借りて、住宅ローン控除を10年間しっかりと受けることが、最も節税の面からも良いのではないでしょうか。

経営者が住宅ローンを借りる方法を、次の記事で紹介しています。

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